エンジニアとしてラボ環境使用の “いろはの「い」” とは
目次[非表示]
- 1.はじめに
- 2.テクニカルセンター紹介
- 3.初めての講師役
- 4.テキストの創意工夫
- 5.筆者によるテキストの書き下ろし部分
- 6.講習本番
- 7.終わりに
はじめに
NOPのパートナーブログをお読みいただいている皆様、はじめまして。ネットワンパートナーズ株式会社(以下、当社という)の若手SEが、日々の技術業務の中でどのように過ごしているかの一端について、2年目メンバーである筆者からお伝えしたいと思います。今回、1年目のメンバーに検証設備(ラボ環境)の使い方を講習(レクチャーとハンズオン)することになり、初めて講師役を任されましたので、その視点からまとめてみたいと思います。本稿は、"Challenge Blog" 記事の第1弾です。
テクニカルセンター紹介
ネットワングループは、ネットワーク技術研究施設であるテクニカルセンターを有しており、その規模は床面積2,100 ㎡のエリアに300本のラックを設置している国内最大級のものです。ネットワングループのSEは、この設備を活用して提案前の事前検証又は導入後のトラブルシューティングに取り組んでいます。
さて、テクニカルセンターの設備は、SEが思うまま・勝手気ままに使用出来るものではありません。使用するには、大枠、①手続き・作法のルールの理解、②検証環境の構築スキル をマスターすることが必要です。SEはとかく②項だけに着目しがちですが、①項が欠落するとペナルティを受けてその後の使用許諾が得られなくなることがあるので要注意です。
初めての講師役
タイトルにもあるように、今回、筆者が1年目のメンバー(5名)へ “いろはの「い」” を教える講師役を任されました。講習の内容は、およそテクニカルセンターで実際に検証環境を構築するまでの一連を教えることです。まず講義の開催にあたって、次の準備をしました。
- テキスト作成
- テキストの事前リプレイ(テキスト通りに行えるかの確認)
- 使用機器の予約
- 使用場所の予約
- 各種申請
本来であれば、使用機器や使用場所の予約ほか、全ての各種申請を1年目のメンバーにやってもらうのが良いのですが、時間の都合で、筆者が行うことにしました。また受講者の講習への集中と使用場所の広さを考慮して、1年目のメンバーを2グループに分けて、同じ講習を2回開催することにしました(1回目:2名、2回目:3名)。
テキストの創意工夫
準備の中で一番苦労したのは、テキスト作成でした。もっともゼロから作成したわけではなく元資料があるのですが、自身が講師をやるとなると、それなりにアレンジしなければうまく説明出来ません。今回使ったテキストの章立ては、図1のとおりです。
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図1 今回使ったテキストの章立て
今回の講習の課題は、検証VDIネットワークからNOPラボネットワークを経由して、テクニカルセンターの機器に接続する構成を組むことです。完成構成図を図2に示します。
図2 完成構成図(テキスト1章から抜粋)
筆者によるテキストの書き下ろし部分
今回準備したテキストで、筆者が新たに書き下ろしたのは5章と6章です。5章では、機器設定に使うツール群、具体的にはターミナルソフト(Tera Term)とコンフィグ差分チェック(WinMerge)を紹介しています。6章ではそれらのツール群を使用して、基本設定コンフィグの投入と、コンフィグ投入前後の比較を行う実習手順を示しています。
これらを書き下ろした筆者の意図は、自身が1年目のとき、先輩にログを取得するよう指示されたものの何も手も出せずに恥ずかしい思いをしたので、カリキュラムにきちんと組み込んでおく必要を感じていたからです。また、テキストを 「なぜログを取得するのか」に立ち返ってまとめたことが、実習にありがちな「指示どおりにやればよい感」を排除することにつながったと自負しています。5章のツールの紹介部分(抜粋)については図3に示します。
図3 ツールの紹介部分(テキスト5章から抜粋)
なお、テクニカルセンターのエリア内は飲食禁止(持ち込みを含む)です。これは、機器に飲み物をこぼしたり、食べ物を落としたりすると故障に繋がるからです。まさかお客様先の機器エリアで飲食をしながら作業をする当社グループのSEはいないでしょうが、社内のエリアということで気が緩んでついやってしまいがちです。この辺りのルール・マナーは、1章にまとめてあり、口酸っぱく指導しました。
講習本番
1回目:
1回目では、1年目のメンバー2名に講義しました。著者のスキルと経験の不足もあって、テクニカルセンター内のネットワークの説明では少し苦労しましたが、大きな混乱はなく予定時間枠内に終了することが出来ました。
しかし反省点はあり、①受講者のIPアドレスなどが直ぐに確認出来ず設定確認に手間取ったこと、②機器の返却やLANケーブルや電源ケーブルの管理に不手際があったことが挙げられます。
2回目:
2回目では、1年目のメンバー3名に講義しました。前回の反省から、ホワイトボードにIPアドレスや機器の管理情報について図4のように書き出しておき、何がどうであるかをすぐに確認を行えるようにしました。
図4 ホワイトボードによるIPアドレスや機器の管理情報
2回目は1回目から1名増えるだけと高を括っていましたが、実際の作業は1.5倍になるわけで、未熟な講師役としては確認作業に右往左往することがありました。そういう中でも、ホワイトボードに書いた情報を確認しながら対処出来たので、受講者のミスにもすぐに気が付くことが出来ました。改めて、書き物の重要性を思い知りました。
このようなことはあったにせよ、2回目も1回目と同様に大きなトラブルもなく予定時間枠内に終了することが出来ました。
1回目、2回目ともに、受講生には終了アセスメントとして理解度クイズに答えてもらいましたが、全員、難なく正解を答えられていました。講習の中にはつまずきやすいポイントもある程度含めていましたが、そこも理解してもらえたものと満足しています。受講者の声として、「ラボネットワークの構成が理解出来ました」、「パッチについてきょう初めて分かりました」などのフィードバックをもらっています。
ちょっとしたTopicsですが、ハンズオンではLANポートとWANポートがあるルーターを使用したのですが、IPアドレスをWANポートに設定すべきところをLANポートに設定しようとしていたことでエラーが出ているケースがありました。ネットワーク構成図(論理図)を実機に展開するときに、どちらのポートがどちらであるのかを混乱していることで生じたものですが、こういうことは実機で体験しないとイメージが湧かないものです。
終わりに
筆者自身も若手エンジニアの一人に過ぎず、こういうことを言うのは憚られますが、ネットワークの知識を習得するためにドキュメントを読んだり資格試験の勉強をすることは大切だと感じつつ、やはり実機を触ることで得られることでの学びが多いものだと強く感じています。ぜひ、これからも1年目のメンバーには、今回の講義での学びを生かしてテクニカルセンターを活用し、機器に触れる機会を多く持ってほしいと思います。
講師役を任せていただいた先輩方にもお礼を申し上げます。筆者としては、初めての講師経験だったので、準備から当日までアドバイスをいただき、貴重な経験を得ることが出来ました。大変、感謝しております。
最後になりましたが、筆者は2024年12月を以って、新卒・1年目から配属されていた ”TechDesk” を離れることになりました。これから何を担当していくのかは未定ですが、TechDeskでの1年3か月の経験を生かして次のチームでも頑張っていく所存です。最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
アイキャッチの写真:
テクニカルセンターでの講習風景。写真奥、ホワイトボード側でこちらを向いているのが筆者です。
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