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段取りと完成形のセンスを磨く課題を~NOP流の取り組み2~


目次[非表示]

  1. 1.はじめに
  2. 2.アクティブコミュニケーション考
  3. 3.課題の企画
  4. 4.課題の進行と見守り
  5. 5.発表会
  6. 6.振り返り座談会
  7. 7.終わりに

はじめに

ネットワンパートナーズ株式会社(以下、当社又はNOPという)では、毎年、新卒配属のオンボーディングプログラムとして「新卒OJT」を実施していて、その概要については前回のBlog記事でご紹介しました。このカリキュラムは毎年バージョンアップしていて、開催年度ごとにぴったりな内容を提供出来るようにOJT事務局で創意工夫しています。
本稿では、2024年度に導入した新カリキュラムである「チーム取材&報告」について、紹介したいと思います。

前回のBlog記事:
新卒配属のオンボーディングは如何にあるべきか~NOP流の取り組み~ | ネットワンパートナーズ株式会社ブログサイト (netone-pa.co.jp)


新カリキュラムのコンセプト

前回のBlog記事では、「新卒OJT」のカリキュラムでは、コンセプトの一つに「研修一般における、受け身姿勢、業務との乖離による現実味の薄れを排除する」を挙げていると書きました。しかし、カリキュラム編成上、座学は単元ごとの講座風に、実習は小ワーク風に建て付けざるを得ないところがあります。その結果、「インプット主体」で「指示どおりのアウトプット要求」の傾向になりがちで、それをこじらせると「指示待ち人材」を育成するための研修になってしまいます。
本来、仕事の達成感は、始めから終わりまで自ら段取りし、自主性・独創性を発揮して、想定どおりに完成出来たときに最大限に得られるものです。そして、課題を出した上司・先輩から「これがほしかった!」と褒められ、期待に応えるアウトプットが創作出来たならば喜びも一入です。そういう仕事の「段取りと完成形」のレベルはどういうものを目指せば良いのか、実践を通してセンスを磨けるようなカリキュラムがほしいところです。
そこで、フルスクラッチによる創作課題を、ある程度の期間(月間)で自由闊達に取り組んでもらい、結果、成功するも失敗するも自分達の創意工夫と頑張り次第で、という形で建て付けることにしました。一見、無謀そうですが、失敗することを安全に経験させることも教育・研修では大切なことです。また、ネットワングループが社員の行動指針として掲げる7つのWAYの1つに「失敗も成功も次の糧に」があり、それとも合致します。

アクティブコミュニケーション考

FY24新卒OJTのスケジュールは図1のとおりで、①コミュニケーションのカリキュラムは例年と同じ組み立てです。

2024年度 新卒OJTの科目とスケジュール(概要/改定)

図1 2024年度 新卒OJTの科目とスケジュール(概要/改定)


これをコミュニケーションタイプの切り口で見ると、受け身(Passive)又は同列(Flat)なものであり、積極的(Active)に取りに行くことに少々欠けていそうです。そもそも、コミュニケーションを漢字熟語で表すと「人間交際」であり、言い換えると「社交」が相当だと考えています。先方に合わせて頷く、話を合わせる、質問に答える程度では、良いコミュニケーションとは言えません。そこで、社交(まずは社内交流の意で)を鍛えるために、自ら必要な情報を取りに行く、情報取りに行かないと成果物が創作出来ないという性質を課題に取り入れたいと考えました。
組織・業務におけるヒューマンスキルの主要な要素は、コミュニケーションとコラボレーションです。コラボレーションはコミュケーションに支えられています。戦うための小組織である「チーム」を組んで、内部・外部とのコミュニケーションを図りつつ、アウトプットを共創していくのは、仕事のやり方の基本形です。このセンスも同時に磨いてほしいところです。

課題の企画

以上から、最適なカリキュラム課題は何かを思案し、新卒メンバーが、これから・更にその先で所属する又は連携する組織(チーム)を深く知って、事前に深い関係性を築けるものが良いとの結論に至りました。図1中にある「部門交流会」のカリキュラムはこれに類似していますが、部・室単位であり、組織の管理層から説明を聞いての質疑応答になるところ、どうしても概要・概説と雰囲気に留まります。ここをもっと積極的に攻めてもらう必要があります。
​​​​​​​こうしてまとめた課題は、図2のとおりです。

          ◇◇◇◇◇配属チーム等の役割・業務等を調査して特集記事にする◇◇◇◇◇    
 
皆さんは、業界雑誌社の記者です。本社のデスクの指示で、ネットワンパートナーズ株式会社の幾つかのチームを分担して取材し、特集記事を書くことになりました。具体的な取材対象のチームは、次のとおりです。


    <取材対象チームのリスト 略>


    合計 12チーム分
 
取材する内容は、チームの役割・業務、特色、人員、トピックスなどです。それらを読者に魅力的に伝え、読者が知りたい欲求を満たすようなものにまとめます。記事は、記事1回分 - 一つのチーム - 雑誌(A4)の見開き2ページ(相当)です。
活動にあたり、記者3名又は4名で取材班を編成します。記者のうち1名にキャップを担ってもらいます(案:営業職)。また、取材の分担は、記者の人数に差があるも6チームずつにします。
どういう特集記事にするかは、取材班に一任されています。優れた特集記事を書いた取材班にはデスクから褒賞が「あるかも知れない」という噂があるので、各取材班はライバル同士として鎬を削ってください。
なお、特集記事(ゲラ)が出来上がったところで、取材先チーム、デスクほかに広く確認して(見て)頂くために、発表会(プレ公開)を「取材班の責任」で開催します。

図2 「チーム取材&報告」課題の提示資料(抜粋)

8月の月間課題とは言え、計画的に夏休みを取得してもらうために1週間のブランクを空けているので実質3週間程度です。よって、課題の提示は7月中旬に前倒して行いました。
そしてもう一つ、当社のBlog記事もそうですが、幅広く読んでいただく公開用ドキュメントを正しくセンス良くまとめるためのスキルは、研鑽する場面がなかなかありません。こちらも合わせて鍛えてもらうことで、たとえば当社Blog記事の次世代執筆者育成の一助にならんことを期待しています。


課題の進行と見守り

図2中にあるとおり、2つのチーム(取材班)分けをしてチーム名を決めてもらいますが、ここも新卒メンバーで相談して決めるように任せました。その結果、それなりに上手にメンバーを分け、命名も発表の順番を意識したところからか、チーム名が「前チーム」と「後チーム」というユーモラスな命名になりました。
作業には、概ね、記事の編集方針の決定、スケジュール調整、各チームへの取材の申し入れとヒヤリング実施、記事執筆 等々と相当な仕事量があります。これを全て自分達で行います。課題の進行上、何か困ったことが起きれば、いつでもOJT事務局に相談に来るように伝えたのですが、ほとんど相談に来ることもなく粛々と進めていました。あまりに相談に来ないので、逆にOJT事務局がちょっと心配になる位でした。もちろん、新卒メンバー各人にはOJTリーダー(メンターのような方)がマン・ツー・マンで付いているので、個別にフォローしてもらっていたのだろうと思います。そのあたりもまったく干渉せず自主性に任せ、発表会の日を楽しみにしていました。


発表会

発表会は8月30日の夕方1時間半の枠で行いました。開催案内の通知、発表及び司会進行を全て新卒メンバーでやってもらいました。開催案内の通知はOutlookの予定表で発表会への出席依頼を送りますが、そこには通知時期と通知文等々のルールとマナーがあり、その実践の場でもあります。視聴範囲は当社の全社員であり、OJT事務局メンバーも単なる視聴者です。OJT事務局は何ら御膳立てを行わないので、新卒メンバーが全てを取り仕切らないとならず、相当緊張したことでしょう。
当日は、新卒メンバーによる発表であることに、内容が斬新であることも相まって、当社の社内オンラインイベントとしては破格とも言える人数に集まっていただけました。全12チームを全力取材した成果なので、もとより内容が興味深いこと、そして取材チームを2つに分けたことで記事の書きぶりが異なる新鮮感があることで、長時間の発表ながら飽きることなく視聴し続けてもらえる大変有意義なものになりました。
なお、発表時間の都合上、発表は投影用のパワーポイント資料で行ってもらい、力作である取材記事は共用フォルダに置いて閲覧してもらうことにしました。そして、発表会は録画して共有フォルダに置き、リアルタイムで参加出来なかった方たちも視聴出来るように配慮しました。
取材記事のサンプルとして、「前チーム」による、筆者の所属するセールスエンジニアリング部 第4チーム/TechDeskについてのアウトプットを図3に示します。「前チーム」によれば、新聞記事風の段組みにして、広告風にほかのトピックスの紹介も掲載するように工夫したとのことです。


​​​​​​​取材記事のサンプル(セールスエンジニアリング部 第4チーム/TechDesk)


図3 取材記事のサンプル(セールスエンジニアリング部 第4チーム/TechDesk)


振り返り座談会

発表会の後に、全員で振り返り座談会を開催してもらいました。ここでも、OJT事務局はオブザーバーとして同席するだけです。ここでは、反省・所感を述べ合うだけで終わってしまうともったいないので、振り返りのフレームワークであるKPT法(Keep – Problem – Try)の活用実践の場として位置付けました。そこで出されたところを集約したものを図4に示します。

Keep(続けること;やって良かったこと)

  • 自分から、アイデアを出し目標を設定する
  • 仕事を通じて新たな交流の喜びを得る
  • アウトプットの読み手を意識する(例:読み易さを追求)
  • こだわりところは、こだわる(その程度を含めて)
  • 発表の準備と練習を十分にする

Try(次にすべきことと;やってみたいこと・挑戦したいこと)

  • 計画段階が成功の全てである
  • 時間不足にならないように準備から集中していく
  • 仕事を自ら積極的に取りに行く
  • 集中力低下を起こす並行する別課題にうまく対応する(例:資格試験の学習・受験)

Problem(問題なこと)

  • もっと積極性が必要、チーム内連携にも欠けた
  • 構想・企画、完成イメージ固めが不十分で、それによる遅延も発生した
  • •取材質問の練り上げ不足あり、事前通知も必要でコミュニケーションをうまくするための工夫が必要であった

図4 KPT法による振り返り座談会のまとめ


振り返り座談会での発言を聞いていると、自己を厳しく見つめているところが新卒メンバーの真面目さが出ていて好ましいですし、およそ本カリキュラムで狙ったところを体験出来ていると感じました。とくに、格言「段取り八分の仕事二分」のとおり、計画段階の重要性には、これからの実務でも大いに向き合っていってほしいものです。ともあれ、ぶっつけ本番で取り組んでもらった課題にしては、ワーク及びアウトプットともに、かなりの出来栄えであった見ています。
なお、取材先チームによっては、極めて優しく支援してくださったところがあり、取材記事の添削まで手を染めてもらったようです。これは想定外のこと(ルール違反?)ですが、実務ではいかに相手方に自分の協力者になってもらえるかもキーポイントであり、その一端を経験出来たのは良かったことでした。


終わりに

新カリキュラムの「チーム取材&報告」は、想定どおりの成果と効果を得て、無事、修了することが出来ました。チーム取材への協力と発表会の視聴をしていただいた各部門の方々からは、「良い企画なので来年度も継続するように」、「取材対象チームを拡大してやってほしい」など、 嬉しい声がOJT事務局に寄せられています。
また、図2中にあるとおり、『優れた特集記事を書いた取材班にはデスクから褒賞が「あるかも知れない」という噂あるので』と両チーム間の競争心をあおっています。発表会後、OJT事務局から視聴者を含む全社員にアンケートを送り、「どちらのチームが良かったか、それとも五分の引き分けか」の投票と、「励ましメッセージ(一言)」をお願いしました。集計の結果、両チームのポイントは全くの引き分けであったので、褒賞として両チームの全員に、ちょっと高いアイスクリームをご馳走することになりました(筆者のポケットマネーによる)。また 「励ましメッセージ(一言)」では、諸先輩方から新卒メンバーの心に響く温かい声を数多く寄せていただいたことで、「ひと月間、頑張った甲斐があった!」と思えたことでしょう。

※アイ・キャッチの写真は「西日本オフィス訪問」のカリキュラムのときにオフィス入口において(2024年8月9日 撮影)

写真1 発表会を終えての記念撮影
イノベーションセンター(netone valley)屋上リフレッシュエリアで(2024年9月6日 撮影)





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内田 邦夫(うちだ くにお)

内田 邦夫(うちだ くにお)

前職(省庁)での研究観測とデータ分析、大型計算機センター運営、学術系ネットワーク黎明期の構築・運用に続き、1997年にネットワンに入社以降は、応用技術、品質管理、サービスアカウントマネージャー、人事部(労務、教育・研修、障害者マネジメント)などを経て、2022年からネットワンパートナーズ セールスエンジニアリング部に所属しており、2023年からはTechDesk運用リードを担当しています。 もともとはインフラストラクチャー系のNW技術が領域であり、CCNA、CCNP、CCDA、CCDP及びCCIE(R/S)を保有し、過去にCCNAのテキスト出版(3冊)、そして情報処理推進機構(IPA)で情報処理試験委員の経験(12年間)があります。 また、パートナー様にNOP TECH INFOのTechDesk FAQ記事(#TechDesk)をもっとご活用いただけるように、記事作成と技術校閲も担当しています。ほか、プライベートでは関西のピアノ工房でテクニカルアドバイザーもやっています。
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