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Mist APの位置情報精度

こんばんは。わたくし、Mist Systems 社の製品担当をしております長畑と申します。

先般、Mist Systems 社製アクセスポイントを利用した位置情報精度の検証を実施致しましたので、ここにご紹介致します。  


目次[非表示]

  1. 1.Mist APのBLE
  2. 2.位置の推測
  3. 3.BLEビーコンによる資産管理
  4. 4.BLEを利用する為のベストプラクティス
  5. 5.検証方法と結果
    1. 5.1.検証方法
    2. 5.2.観点
    3. 5.3.試験結果
    4. 5.4.考察
  6. 6.あとがき


Mist APのBLE

既にご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、Mist System社(以下、Mist)の製品は無線LANコントローラをクラウドの上に配置した『クラウド型無線LAN管理システム』です。

物理的な機器として我々が手に取れるのはアクセスポイント(以下、AP)のみで、設定・運用・管理は全てクラウド上のダシュボードにアクセスして行います。

BLEは殆どのスマートデバイス等(以下、デバイス)で標準搭載となっています(主にiPhone,iPad,Android)。多くのモバイル機器では気軽にBLEの利用が可能ですが、では、モバイル機器からのBLEビーコンを送受信するファシリティ側の準備はどうでしょうか。

BLEを利用するにあたり、大量のBLE物理ビーコンを展開し、管理する必要があります。また、物理ビーコンは電波出力の調整が困難なために、電波環境が変更になると再設置が必要ですし、物理ビーコン内のバッテリーは交換するのに手間と費用がかかります。併せて、ビーコン自体は小さいので紛失、または盗難される可能が危惧されます。

Mist APのBLE を利用すれば電波出力、電源、盗難及び紛失の懸念が払拭されます。更にAPはクラウド上で一元管理出来ますので、運用負荷も軽減されます。

MistのAPにはWi-Fiの機能のみならず、BLE(Bluetooth Low Energy/Bluetooth LE)用として、8本のBLEビーコン送信用と8本のBLEビーコン受信用の計16本のアンテナを搭載していますので、BLEビーコンの送信及び受信することが出来ます。このBLEのビーコンを利用して、位置情報の推測が出来るようになり、高精度の屋内ロケーションサービスとしてサービスを提供することが可能となります。  


位置の推測

無線送信出力とRSSI(受信強度)が分かると数式から距離を算出することが出来ます(ここでは数式についての説明は省きます)。この算出された距離を半径とし、円を描けば、三つの円の交点の位置に存在することが推測出来ます。これが三点測位になります。

三点測位


Mistの位置情報の推測も三点測位を基本とします。但し、精度向上のために8本のBLE送信用アンテナからのRSSIとAIを利用します。

アプリをインストールされたデバイスは『どのAPの何番のBLEアンテナからRSSIは○○dBm』であるという情報と、APとそのAPの各BLEアンテナからのビーコンのRSSIをMist クラウドに報告します(報告はMist APのWi-Fi経由である必要ありません)。

MistクラウドでこれらのRSSI情報とスマートフォン固有の特性を考慮し、端末の位置を推測し、ダッシュボードのMAP上にX,Y座標として表示します。


Appクライアントの位置情報の仕組み

併せて、AIを利用しマシンラーニングさせことでより精度の向上を図っています。

マシンラーニングによって精度を向上させるためには、より多くの情報が必要となります。つまり、BLEアンテナからの情報は沢山あるほど、また広範囲であればあるほど、マシンラーニングに有益な情報を取得出来、その結果のRSSI情報をMAPにプロット出来るので正確性が上がり、強いては位置情報の精度向上に繋がります。  


BLEビーコンによる資産管理

APからのBLEビーコンを受信し、Mistクラウドに報告出来るアプリをインストールしたデバイスの事をMistでは、Appクライアント(App Client)と呼びます。

Appクライアントとは逆に、APで受信出来るBLEビーコンを送信しているデバイス(物理ビーコン)をMistではBLEクライアントと呼び、その中で管理用に登録されたデバイスをアセット(若しくはBLE Asset)と呼びます。(記事内ではBLEアセットと記述します。)

位置の推測方法やクラウドのダッシュボード上の表現は同じですが、BLEアセット自体は単なる物理ビーコンなので、Mistクラウドへの報告は出来ません。RSSI情報はビーコンを受信したAPがMistクラウドに報告します。

BLEアセットはその名通り『資産』にあたり、用途は移動出来てしまうホワイトボードや、病院で使用する医療用ワゴン等に取り付けて、位置情報からその『資産』が現在はどこにあるのかを明確することに利用出来ます。  


物理ビーコンによる位置情報取得の仕組み



BLEを利用する為のベストプラクティス

BLEで位置情報を求める場合、通常のWi-Fi APの設置基準では高精度の位置情報が得られません。次にBLEを利用する為のAP設置に関わるベストプラクティス記載します。

・指向性のBLE ビーコンは下方45度の方向に送信しているので、AP は天井から真下向き設置。

・設置高は床面から215㎝~455㎝(7~15フィート)。

・AP間の距離は8m~15m程度。

・廊下、通路の設置に関しては、AP 間の距離を最大17m程度離すことが可能。

・金属物体が多くあるような場所では反射波などの影響で位置精度が下がるため、金属物体からAPを2~3m以上離して設置。

・位置情報の精度を上げるために、APは3台以上が推奨。

・クライアント端末から複数APへの見通しを確保すると精度が向上。

・AP 間の見通しではなく、クライアントからの見通しが重要なので、廊下・通路等ではクライアントからAP2台 以上の見通しが確保できることがベスト。

・フロアマップは必ずスケール(縮尺)を調整する。

・フロアマップは上が真北になるよう設定する。

・フロアマップにAPをプロットする際は、APの 設置高、オリエンテーション(APのLEDの向き)を正確に設定する。


APの設置とBLEの仕組み

正しく設置した場合の、位置精度は1~3m程度になります。  


検証方法と結果

検証方法

検証には三角形を構成出来るように執務室内にAPを3台設置。クラウドダッシュボード上ではWi-Fiクライアントも表示されるので、Wi-Fiクライアントの位置情報も確認。

Wi-Fiクライアントの位置情報

AppクライアントとWi-FiクライアントはiPadを使用し、Appクライアントにする為にMistが提供しているSDKをインストール。BLEアセットは物理ビーコンを使用。

APの三角形内(三点測位内)に7か所の測定ポイントと三角形外に6か所の測定ポイントの計13か所で設定。各ポイントに到着後、2分程停止し、その測定ポイントとダッシュボード上での表示にどれほどの誤差が発生しているかを測定。測定回数は3回実施。


AP設置場所と測定箇所


観点

三角形内及び全体で1m内、3m内、5m内にそれぞれ、どの程度の割合で収まっているのかを結果として確認。  


試験結果


試験結果


考察

・全体(三角形内+三角形外)と三角形内(三点測位内)では、どのデバイスにおいても三角形内(三点測位内)の方が位置情報精度は高くなっています。

・Appクライアントは、三角形内(三点測位内)において3回の測定結果の平均でも3m以内の確立は95%であり、高精度の位置情報推測が出来ています。

・BLEアセットにおいて、三角形内(三点測位内)で3m以内の結果が然程、良好な結果を得られなかった要因としては、床や天井からの反射・吸収

・回折や干渉波の影響を大きく受け易く、その為にゆらぎが発生していることと、ダッシュボードのデータ更新が30秒間隔であり、測定作業におけるポイント確定時のタイミングにより、誤差が発生していると推測されます。

・一般的にWi-Fiクライアントの位置精度は5~10m以内と言われていますが、本検証に於いては三角形内(三点測位内)で5m以内の結果が86%と、比較的良好な結果が出ています。

ただこれは、Wi-Fiクライアント測定時に移動先測定ポイントにて、クライアント側のWi-FiをOff-Onすることで隣接のAPへ接続するようにしていることと、ダッシュボード上では比較的、Wi-Fiクライアン トはAPの近隣に表示される特性の為です。

Mistからも『Wi-Fiの位置情報にはフォーカスしていない』、『現時点ではWi-Fiの位置情報は正確ではない』とコメントがありますので、Wi-Fiクライアントの位置情報は現時点ではあまり期待できない精度となります。  


あとがき

今回はBLEビーコンを利用した位置情報についての記載内容でしたが、先述のとおり、Mist APはWi-Fi機能も実装しています。Mistのみが搭載するWi-Fi機能として『Dynamic Packet Capture(自動パケットキャプチャ)機能』、『Wi-Fi Service level monitoring(Wi-Fiサービスレベルモニタリング』、『Root Cause Analysis(根本原因分析)』があり、ユーザ視点からの新しいWi-Fiの運用、管理、サービスを実現できます。

では、皆様。次回にお会いするまで、ごきげんよう。


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