
経験知の文書化に必要なスキルの強化を
目次[非表示]
- 1.はじめに
- 2.経験知の文書化の難しさ
- 3.何がBeyondなのか
- 4.Blog記事の章立て
- 5.執筆陣の紹介
- 6.おわりに
はじめに
「人間は経験の範囲でしか行動できない」と言う見解があります。筆者の品質管理責任者の経験からも、経験を確実なものにすること、すなわち新任者に対して初期教育・訓練を行うことを組織に義務付けているISO 9001品質マネジメントシステムの要求事項は、一つにここに基づいているであろうと考えています。もちろん、ここでいう教育・訓練は従事する作業を対象としていますが、業務で暗黙のうちに多々発生するドキュメント作成、つまり文書化の作業についても、同様に教育・訓練すべき複合的なスキルだと考えています。たとえばISO 9001を導入しようとしても、自社・組織の品質マニュアルや手順書類を適切に文書化できないようであれば、品質マネジメントシステムの構築自体がおぼつかないでしょう。
本稿は、その初等教育・訓練の一環として、2年目を迎えた若手社員に経験知を文書化するスキルを鍛えるために “Beyond Challenge” と名付けて取り組んでいる活動と、その骨子になる基本的な考え方・方向性について紹介したいと思います。
経験知の文書化の難しさ
経験値とは、経験や作業現場での実践を通じて会得した勘所のことです。経験知の文書化が難しいのは、そもそも個人のスキルや判断の基盤であって、簡単に言語化出来ない暗黙知の要素が多く含まれているからです。さらには、対象が文脈依存であったり、正解不在(合格レベルが複数あるが、満点の正解があるとは限らない)であったり、あるいは成功と失敗の両面がある性質を持っています。
経験知の文書化について、手順書(マニュアル)やナレッジベースと同様にテンプレートを埋めればOK、あるいは経験豊富だから書けるというのは勘違いです。そうした考えを排して思考の再現技術までスキルを高めていくことが、個人の頑張りとともに、組織にも求められています。
何がBeyondなのか
2年目・1年目の社員の文書スキルを高める活動としては、2024年下期の取り組みである “Challenge Blog” が先例であり、一定の成果を収めました。次は、その活動立ち上げ時に筆者が寄稿したBlog記事です。
この活動における2年目・1年目の社員による寄稿は、サイト内検索窓から “Challenge Blog” で全件(10件)をご覧いただけます。それぞれの経験が、若手ならではの目線で書かれています。
Blog記事の章立て
今回は前回の活動の2回目にあたりますが、執筆内容は「配属以来の経験から」と同じテーマにしています。しかし、単なる繰り返しでは面白くありません。筆者の前回の活動における未達・反省を踏まえ、前回を超える “Beyond” を試みたいと考えました。今回の活動では記事内容の訴求力をより高めるべく、Blog記事の章立てにプレゼンテーションなどの枠組みを活用することにしました。文書は、読んでもらえなければ存在価値がなく、伝わってこそ真価が発揮されます。この点を意識して執筆してもらうことを狙いとしています。
前段の主張と一部反するようですが、Blog記事にもエレガントな(テンプレートでなく)章立てというものはあります。この章立ての例として、次のフレームワークを課題説明会で紹介しています。プレゼンテーションの枠組みとして、一般にSDS法やPREP法は多用されますが、それ以外のものは名称を聞くことすら少ないのではないかと考えています。
- SDS法(汎用フレームワーク)
- FABE法(製品又はサービスのセールスポイントを聞き手に分かり易く伝える)
- PREP法(報告書又は企画書の説明など、会議等で主張を述べる)
- BEAF法(聞き手の意識を集中させて購買意欲を高める)
- TAPS法(聞き手に問題意識を喚起させる)
- PASONA法(セールスレター、セールスWebページで用いられる)
- ピッチ法(商品サービスの紹介やセールス全般に活用される)
- AIDMA法(消費活動をステップで表す)
- エピソード記述(保育実践の場で活用される関与観察の説明と共有)
そもそもプレゼンテーションとは、特定のテーマについて情報を伝え、聞き手の理解や行動を促す情報伝達手法なので、パワーポイント資料による説明だけを指すものではありません。Blog記事はもちろんのこと、メール本文も同じ部類に含まれます。このように適用範囲を広げて考える視点を持つことも、本活動のサブテーマに置いています。
なお、末尾のエピソード記述は、いわゆるプレゼンテーションの枠組みではありませんが、筆者が日頃から活用し、使い勝手が良いと判断しているため、合わせて紹介しています。
執筆陣の紹介
筆陣の面々は、筆者の所属するセールスエンジニアリング部 第4チーム(TechDesk)に配属されてまもなく1年を迎え、そろそろ次の活躍場所へと飛び立とうとしているところです。最終審査・卒業試験ではありませんが、著述スキルを高めてもらいたく、もうひと頑張りしてもらいます。これから6月末に掛けて順次寄稿してもらいますが、必ずしも執筆者の顔写真が掲載されるわけではありません。もしBlog記事をお読みになる際に、「このうち誰が書いているのかな」と思いをはせていただけると嬉しいです。

写真 Beyond Challenge執筆陣(2026.4.3@本社(豊洲)オフィス内で撮影)
おわりに
筆者自身、「会社人」の人生を振り返って、駆け出しの頃に上司や先輩に赤ペン先生をしていただいたことを思い出します。それも当時はワープロがない時代だったので、全部最初から書き直しでした。しかし、こうした積み重ねが著述スキルの大きな成長につながりました。その経験を踏まえ、”Beyond Challenge” の活動でも同様の指導を行う所存です。そもそも、ビジネス文書の著述で要求されるスキルは、学校教育などで主体となる物語文学の著述のそれとは異なるものです。それにもかかわらず、指導を受けられる機会が減ってしまったのは、嘆かわしいことかもしれません。生成AIの活用時代において、正確かつ適切なプロンプトを記述できることが求められているにも関わらずです。
最後に、「新任者に対して初期教育・訓練を行うことを組織に義務付けている」と言うISO 9001の要求事項をいま一度思い起こしながら、「嘆く前に指導を!」の気持ちで ”Beyond Challenge” の旗振りにあたりたいと考えています。





