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メッシュ構成のバックホール(Backhaul)性能検証

建物の構造上、あるいはオープンスペース等で、有線LANのケーブリングが難しい場合は、AP 間を無線接続でバックホール(Backhaul)を構築し、無線サービスを提供する方法があります。

今回、このバックホール間のスループット測定を検証しました。

目次[非表示]

  1. 1.APのメッシュ機能
  2. 2.メッシュ構成とブリッジ構成
  3. 3.バックホールのスループット
  4. 4.検証方法
  5. 5.検証結果
  6. 6.Wi-Fi6 Eによる高スループットの獲得


APのメッシュ機能

メッシュ機能とは基幹ネットワークへの接続を有線LAN接続ではなく、AP 間を無線接続でバックホール(Backhaul)を構築し、無線端末にサービスを提供する機能です。基幹ネットワーク側へ接続するAP側を親機、ダウンリンク側を子機として親機⇔子機間を無線接続します。

※親機、子機の呼称はメーカにより様々です。

ネットワーク側へ接続するAP側を親機、ダウリンク側を子機として親機⇔子機感を無線接続します.png

    

メッシュを構築するメリットは子機へ有線LAN のケーブリングが不要なので、建物が古くフリーアクセスや天井裏のスペースがないケース、キャンパス内の建物間接続や屋外のオープンスペース等、ケーブリングが困難な場所で、無線サービスを提供することが可能となる点です。また、ケーブリングが不要なので、構築の費用軽減、時間短縮が期待出来ます。

メッシュ構成は親機、子機の1対1シングルポイントから1対N、親機を複数準備した冗長構成が可能です。子機間でバックホールを構築するマルチホップもメーカによりサポートする内容は異なりますが可能です。

メッシュ構成は親機、子機の1対1シングルポイントから1対N、親機を複数準備した冗長構成が可能です。


メッシュ構成とブリッジ構成

メッシュもブリッジもバックホールを無線で構築することは同じですが、メッシュの場合は親機AP 、子機APで無線端末へサービスを提供します。ブリッジはAP 間を結ぶだけでAP で無線端末へのサービスは提供しません。

メッシュ接続とブリッジ接続

メッシュ構成でブリッジ構成もサポート出来ますがブリッジ専用機の中にはバックホール間をKm 単位で接続を実現する機種もありますので、用途によって機種を選定する必要があります。


バックホールのスループット

親機自身はスイッチの1Gbps 等のポートに接続されますので、親機に接続している無線端末ではスループットを期待できますが、メッシュ構成の子機側に接続された無線端末の通信はバックホールを経由して親機に転送されます。そのため、子機⇔無線端末間で高スループットを確保できたとしてもバックホールで帯域を確保出来ないと、子機に接続された無線端末では良好なスループットを得られません。


メッシュ構成の子機側に接続された無線端末の通信

スイッチに接続されていればAP の有線側でどの程度の帯域が確保できているかはステータスで確認出来ますが、AP のバックホール間のスループットについては確認出来ないので、今回、このバックホール間のスループット測定の検証を実施しました。


検証方法

参加させるAP はブリッジ専用機ではないことから、通常に設計するAP の設置間隔を元にAP間を15m、30m の距離で測定。また、2拠点間の通信ではフレネルゾーンを計算してAP の設置高を決める必要がありますが、今回は近距離であることから設置高は1.5m 程としました。

検証方法

検証構成


検証時の設定内容、構成及び参加AP は、

・AP の電波出力は最大

・チャンネルは5.6GHz(100ch~128ch)帯で、ボンディングは80MHz

・参加AP:Meraki MR86、Meraki MR70 、Mist AP61、Mist AP43

・検証場所は屋内


検証結果

検証結果

Meraki MR86/MR70 、Mist AP43 ではそれほどスループットを得られませんでした。

Mist AP61 においては期待値近くのスループットを得ました。この結果とMist AP61 は屋外用であることからどのくらいのAP 間の距離まで良好なスループットを示せるかを確認する為、実際に屋外に持ち出し、AP 間を50、100、150、200、250、300m の6ポイントでの測定を実施しました。

   

検証結果から150m 位までであればメッシュ構成でも快適に利用

AP 間を300mにしても230Mbps のスループットを得ていますが、RSSI が-79dBm 。200mにおいてもRSSI が-74dBm の値なので、RSSI(受信電波強度)で見るとギリギリです。検証結果から150m 位までであればメッシュ構成でも快適に利用出来そうです。


Wi-Fi6 Eによる高スループットの獲得

Mist AP61 はWi-Fi5 規格でありボンディングも80MHz までのサポートですが、6GHz帯で59チャンネル(20MHz)を利用出来るWi-Fi6 E の法整備がおわり、日本でもリリースされれば多くのボンディングが可能になり、広帯域の利用が出来るようになりますのでより安定した通信が可能になります。


ボンディングでのチャンネル数

無線区間の広帯域化に伴ってAP のアップリンクを収容するスイッチのポートも、1Gbps から2.5や5Gbps などのmGig のポートでない場合ボトルネックになる可能性があります。今後の無線LAN導入に関してはスイッチの選択も十分考慮する必要があります。


※この検証結果は性能値を保証するものではありません。メッシュ構成の導入を考慮されている際に検討時の参考値としてご利用ください。また、導入検討の際には事前検証を実施し、設計上、運用上で期待した性能を確保できるか確認することをお勧めします。


メーカ情報

設定方法や機能につきましては以下のメーカ情報を参照願います。

◎Meraki

-ワイヤレス メッシュ ネットワーキング

◎Mist

-Mesh Configuration


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長畑 稔彦

長畑 稔彦

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