若手エンジニア必見!Cisco IOSの選定ガイド
「Ciscoのルーター・スイッチで使用するOSの選び方を知りたい」
「使用しているOSがEOLを迎えた。移行先のOSをどのバージョンにするか悩んでいる」
「推奨OSバージョンが複数あって、どれを選べばよいかわからない」
そういったエンジニアの方々に向けて、本記事ではCiscoのOSを選定する際のポイントをまとめました。初心者にもわかりやすく解説します。
目次[非表示]
- 1.使用できるOSの確認方法
- 2.OS選定の考え方について
- 2.1.標準サポートモデルと延長サポートモデル
- 2.2.Ciscoが推奨するOSのバージョン
- 2.3.Cisco Suggestedからの絞り込み
- 2.3.1.サポートの長さ
- 2.3.2.稼働実績
- 2.3.3.要件に適したOS選び
- 3.アップグレードによる影響の確認方法
- 4.まとめ
- 5.参考情報・URL
使用できるOSの確認方法
Ciscoの製品は、型番によって、使用できるOSが異なります。
特定の機器で使用できるOSを確認する際には、Cisco Software Researchを活用しましょう。
Cisco Software Researchを使えば、各Cisco製品のハードウェアに対応しているOSのバージョンを調査することができます。
それぞれのOSがリリースされた日付やOSのサイズ、ハッシュ値など詳細情報の確認も可能です。
【Cisco Software Researchの使い方】
「Product」の検索ボックスに機器の型番を入力すると、その機器で使用できるOSが表示されます。Ciscoが推奨しているバージョンのOS(Cisco Suggested)には、星印がつけられています。
※Cisco Suggestedの詳細については、本記事内「Ciscoが推奨するOSのバージョン」の章で解説します。
各OSファイルの詳細情報も確認できます。
☆各機器で使用できるOSは、Cisco Software Researchを使って調査
☆OSの詳細情報やCiscoが推奨するバージョンもCisco Software Researchで確認可能
OS選定の考え方について
機器で使用できるOSがわかったら、自分が使うOSをその中から選定しましょう。ここからは、OSを選定する際の考え方について説明していきます。
標準サポートモデルと延長サポートモデル
Ciscoが提供するOSには、「標準サポート」と「延長サポート」という2種類のサポートモデルがあります。
標準サポートと延長サポートの違いは、サポートされる期間です。
標準サポートのソフトウェアは出荷開始から12か月間サポートされますが、延長サポートのソフトウェアは出荷開始から36か月間サポートされます。
延長サポートリリースのほうがサポート期間が長いため、基本的には延長サポートからOSを選びます。
延長サポートのソフトウェアは、マイナーリリース番号が3の倍数になっています。
サポートモデル |
Cisco IOS XE ソフトウェアリリース |
標準サポート |
16.1、16.2、16.4、16.5、16.7 など |
延長サポート |
16.9、16.12、17.3、17.6、17.9 など |
引用元:「ソフトウェア ライフサイクル サポートに関する情報 - IOS XE - Cisco 」(https://www.cisco.com/c/ja_jp/products/collateral/ios-nx-os-software/ios-xe-16/bulletin-c25-2378701.html)
☆基本的に、サポートモデルが延長サポートとなっているOSを選択
☆延長サポートのOSは、マイナーリリース番号が3の倍数
Ciscoが推奨するOSのバージョン
「使用できるOSの確認方法」でも少し触れましたが、OSのなかにはCiscoによって推奨されたバージョンがあります(Cisco Suggested)。
Cisco Suggestedは、ソフトウェアの品質、安定性、寿命に基づいて延長サポートリリースの中から選定されています。
Cisco Suggestedとして採用される基準 |
一般的には、Cisco SuggestedのOSを使用することが推奨されます。
なお、公開されて間もない最新のOSに関しては、不具合の改修が進んでいないため、基本的にはCisco Suggestedとされません。稼働実績があるOSがCisco Suggestedとなります。
Cisco SuggestedのOSは随時更新されていきます。
☆Cisco Suggestedは、品質、安定性、寿命に基づいて選定された延長サポートのOS
☆基本的に、Cisco SuggestedとなっているOSを選択することが多い
Cisco Suggestedからの絞り込み
機器によっては、Cisco Suggestedとして複数のバージョンが示されていることがあります。
たとえば、Catalyst 9300-24T-A Switchで使用できるOSを確認してみたところ、17.6.5と17.9.3の二つがCisco Suggestedとされていました。
※2023年7月12日時点での情報です。最新の情報についてはCiscoの公開情報をご確認ください。
Cisco Suggestedが複数存在する場合、どのOSを選択すればよいのでしょうか。今回のケースを例として、その考え方について解説します。
17.6.5と17.9.3のどちらを選ぶかを判断する基準として、たとえばOSのサポートの長さ・稼働実績などが考えられます。
サポートの長さ
OSがサポートされている期間を確認する方法について記します。
Cisco IOS XE 17 - End-of-Life and End-of-Sale Notices - Cisco
こちらは、IOS XE 17のEOL(Ciscoによるサポートを受けられる最終日)のアナウンスページです。
2023年7月12日時点で、17.6.5はEOLのアナウンスがされていますが、17.9.3はEOLのアナウンスがされていませんでした。
End-of-Sale and End-of-Life Announcement for the Cisco IOS XE 17.6.x - Cisco
17.6.xのEOLアナウンスを確認すると、Last Date of Supportが2026年3月31日とされています。この日まではCiscoのサポートを受けられます。
17.9.xについてはEOLのアナウンスがなされていません。EOLのアナウンスは、通常、EOL日の3年6か月前に行われます。したがって、EOLアナウンスが出ていない17.9.3のほうが17.6.5より今後長期間サポートを受けられると推測できます。
CiscoのEOLポリシーについて、より詳しく知りたい方はCiscoのEnd-of-Life Policyをご確認ください。
稼働実績
重大な不具合が修正された回数は、そのOSのメンテナンスリリース番号が表しています。
17.6.5のメンテナンスリリース番号は5です。17.9.3のメンテナンスリリース番号は3です。17.6.5と17.9.3では、17.6.5のほうが不具合の改修が進んでいます。
要件に適したOS選び
ここまでの情報を基に、要件に応じたOSの選定方法について考えてみます。
OSを選定する基準の例として、サポートの長さや稼働実績が挙げられます。たとえば、次のような考え方でOS選定が可能です。
・OSがインストールされた機器の導入後、構成変更や設定変更ができない。
→使われてきた実績があり、安定稼働が確認できているOSを選ぶ。
・新しい機能を活用したい。設定変更や構成変更は頻繁に行う。
→新しくリリースされたOS、新規不具合・脆弱性への対応期間が残っているOSを選ぶ。
EOL日やリリース日、稼働実績などの情報を確認することで、どのOSが要件に適しているのか判断しやすくなると思います。
☆Ciscoによってサポートがなされる残り期間は、EOLのアナウンスページから確認
☆重大な不具合が修正された回数は、OSのメンテナンスリリース番号から確認
アップグレードによる影響の確認方法
ここまで、OS選定の考え方について説明しました。
次に、アップグレードをすることによる影響の確認方法について説明します。
仕様変更の確認
Ciscoが公開しているリリースノートに、そのバージョンのOSで解決した不具合や仕様面の変更点などの情報がまとめられています。
Cisco Software Researchからアクセスすることもできます。
仕様変更について確認する際は、アップグレード元のバージョンからアップグレード先のバージョンまでのすべてのリリースノートを参照しましょう。
リリースノート内、Whats Newの項目に記載があります。
☆OSの仕様変更は、リリースノートのWhats New in Cisco IOS XEを確認
☆仕様変更について確認する際は、アップグレード元からアップグレード先まですべてのリリースノートをチェック
不具合情報の確認
不具合の情報は、リリースノート内Open Caveatsの項目とResolved Caveatsの項目に記載されています。
Open Caveatsには該当のOSに存在する不具合が記載されており、Resolved Caveatsには該当のOSで修正された不具合が記載されています。
なお、Release Notesにはすべての不具合情報が網羅的に乗っているわけではなく、周知すべきとCiscoが判断したもののみが記載されています。
そのため、ドキュメントでの調査と併せて実機での動作検証を行うことを推奨します。
☆OSの不具合情報は、リリースノートのOpen Caveats及びResolved Caveatsを確認
まとめ
本記事ではOS選定のポイントについて説明してきました。今回の内容をおさらいしましょう。
①OSの情報は、Cisco Software Researchで調査 |
Cisco Software Researchやリリースノートを活用することで、OSを選定しやすくなります。
最後になりましたが、弊社はパートナー企業との協業ビジネスに特化し、先進のICT商材、サービスの販売支援・導入から保守・運用サービスまでを、高付加価値とともに提供しております。ICTインフラの導入でご相談があれば、お気軽にネットワンパートナーズ株式会社までお問い合わせください。
参考情報・URL
・機能を比較して最適なソフトウェアリリースを選択 - Cisco
IOS ソフトウェアリリースを選択する方法について、Ciscoが説明したドキュメントです。
・Recommended Releases for Catalyst 9200/9300/9400/9500/9600 and Catalyst 3650/3850 Platforms - Cisco
Catalyst 9000シリーズのCisco推奨リリースについて説明されたドキュメントです。
・ソフトウェア ライフサイクル サポートに関する情報 - IOS XE - Cisco
Cisco IOS XE ソフトウェアの名前に付されている各数字の意味について説明されています。
サポートタイムラインとサポート終了についても説明されています。
・Products - End-of-Life Policy - Cisco(英語)
Ciscoの製品サポート期間のポリシーについて記載されています。