【現役駐在員ブログ】米国でモバイル免許証を取得!?
はじめに
こんにちは。はじめまして、Marvinです。今年(2023年)の4月から米国のベイエリアで駐在員として勤務しています。米国の政治や経済、テクノロジーの動向など真面目な話題以外に、実際に暮らしている中で体験した身近な話題などを不定期ながらUPしていきたいと思います。
その他に、一緒に働く米国駐在員メンバーが発信している『Bay Area Newsletter』『Techh Blog』もありますので、こちらも是非チェックしてください。
(下記のQRコードから、Subscribeお願いします!)
目次[非表示]
- 1.はじめに
- 2.米国でモバイル運転免許証を取得してみた
- 2.1.2023年8月、カリフォルニア州でのモバイル運転免許証のテスト運用がスタート
- 2.2.実際にモバイル運転免許証をインストール
- 2.3.よし、次は使ってみよう
- 2.4.ユーザーの利用メリットとセキュリティの確保
- 2.4.1.ユーザーのメリット
- 2.4.2.セキュリティの考え方
- 2.5.生体認証の市場動向
- 3.参照リンク
米国でモバイル運転免許証を取得してみた
スマートフォンのWallet機能は多くの方が利用しているのではないでしょうか。私自身、iPhoneユーザーとしてWalletの導入初期からこの機能を愛用しています。Androidは利用したことがないため、あえて触れませんが、AppleのWalletは2012年のiOS6時代に「Passbook」としてデビューし、2014年のiOS8で「Wallet」へと名前が変わりました。「Passbook」は搭乗券やチケット、クーポンの管理を主な機能としていましたが、「Wallet」にはさらに決済機能も加わりました。これにより、スマートフォン一台を持っていれば、公共交通機関の利用から買い物、食事まで、現金とクレジットカードやポイントカードがパンパンにつまったお財布を持ち歩く必要がなりました。
但し、運転免許証は除く・・・。
2023年8月、カリフォルニア州でのモバイル運転免許証のテスト運用がスタート
2023年8月より、カリフォルニア州でモバイル運転免許証、通称mDL (mobile driver’s license) のテスト運用が始まりました。このmDLは、テスト運用期間中は150万人に上限が制限されており、どうやら早い者勝ちの模様。テスト運用期間中は空港のセキュリティチェックや店舗でのアルコール購入時の年齢確認など、身分証明としての利用が可能です。しかし、まだ全ての空港や店舗での利用は確立されておらず、通常の身分証を併せて持参することが推奨されています。
mDLを利用するためには、App StoreやGoogle Playから「CA DMV Wallet」アプリをダウンロードする必要があります。ただし、残念ながら現時点ではAppleやGoogleのモバイルウォレットに直接mDLを追加することはできません。
また、カリフォリア州以外にもアイオワ州やミシガン州など他の州もmDLの提供に向けた措置を講じており、アリゾナ州、コロラド州、ルイジアナ州、ミシシッピ州、ジョージア州、ハワイ州、オハイオ州、ユタ州、メリーランド州も検討しているようです。
※ 詳しい情報はカリフォルニア州 DMVの公式サイトをチェック!
<カリフォルニア州 DMV(Department of motor vehicles) 公式 Webサイト>
Download California’s first mobile driver’s license (mDL) today.
実際にモバイル運転免許証をインストール
ものは試しということで、アプリをインストールしてみました。まずmApp Storeからダウンロード(Ratingsは、2.1★★・・・評価低いなぁ・・・)
すっかり、インストール中の画面キャプチャーを取得することを忘れてしまったのですが、ちゃんとYoutube上にインストール手順の説明動画がアップされていました。
手順は至って簡単!!
大雑把に説明すると、①アプリのダウンロード、②免許証のスキャン、③顔写真を撮影、④アクティベーション、といった流れで、5分ほどでセットアップは完了しました。セットアップが完了すると下記の様に免許証の情報がアプリに反映されます。
< CA DMV Wallet 画面 >
< How To Set Up Your mDL / モバイル運転免許証のセットアップ方法>
URL:https://youtu.be/DL5i-lFCoHE
よし、次は使ってみよう
繰り返しになりますが、mDLは『空港のセキュリティチェック』や『店舗でのアルコール購入時の年齢確認』の際に利用が可能です。残念ながら、しばらく米国内の空港を利用する予定がないため、飲めないお酒でも買ってmDLを使ってみようかと考えましたが・・・・・しかし、本日時点(2023年8月末)で、mDLが利用できるのはSacramento(サクラメント)にある小売店5店舗と、Los Angeles(ロサンゼルス)にある1店舗のみとのこと。せっかくインストールしたのに実際にテストできない・・・・・と、うなだれてそっとアプリを閉じました。
ちなみにmDLが利用できる空港は下記です。こちらは結構多いですね!
※ 2023年8月末時点の情報です。https://www.tsa.gov/digital-id
Youtubeにアプリの利用方法についても説明動画がありましたので、リンクを貼り付けておきます。
< 年齢確認:TRUAGE AGE-VERIFIED PURCHASING >
< 空港セキュリティチェック : TSA PreCheck® >
ユーザーの利用メリットとセキュリティの確保
「物理的な免許証の運用で特に困っていないし、セキュリティは大丈夫なの?」という疑問を持つ方もいらっしゃるかと思いますが、このmDLを使う上でのユーザー側のメリットとセキュリティの考え方について簡単にご紹介します。
ユーザーのメリット
見知らぬ相手に情報を開示しなくて済む
様々な場面で身分証の提示を求められた経験がある方は少なくないかと思います。物理的なカードの場合は、カードに記載されている、氏名、住所、生年月日、固有のIDなどの様々な情報が提示した相手にすべて渡ってしまいます。mDLを使用する場合、必要な情報のみがIDをチェックする人にデバイスを経由して共有される、つまり、見知らぬ相手に個人情報を全て開示する必要がなくなります。
紛失・盗難
カバン、お財布を落としてしまった、お店や会社に置いてきてしまった・・・そんな時に、物理カードの場合は、カードに記載されている全ての情報が相手に渡り、場合によってはその情報が悪用されてしまいます。ただし、mDLのようなアプリの場合は、デバイスにFaceIDやTouchID、またPINを利用してログインすることが必ず必要になるため、簡単に情報が盗まれてしまう心配はありません。
セキュリティの考え方
上記にも記載しましたが、mDLはFace ID、指紋、PIN コードなど、デバイスに組み込まれているセキュリティと連動するように構築されています。mDLへアクセスするためには、まずは必ずデバイスにログインする必要があり、かつmDLに入力されたデータは暗号化されmDLへ保存されます。また、モバイル運転免許証の提示を求められた場合は、相手側にQRコードをスキャンしてもらい、必要な情報のみがIDをチェックする人にデバイスを経由して共有されます。つまり、DMV、その他の州機関、デバイスメーカーを含むどんな組織も、ユーザーの同意なしにその情報を読み取ることはできません。
mDLを提供しているCAのDMVでは、収集する個人を特定する情報(氏名や住所、メールアドレス、電話番号、社会保障番号、銀行口座番号など )米国ではPII(Personally Identifiable Information)と呼ばれておりますが、これらの情報の取り扱いについては、下記の様にDMVのWebページで説明がされています。(抜粋)
法律で許可されている場合にのみ個人の PII を収集
mDLを利用するデバイスには、電話番号と DL/ID カードの暗号化された写真を除き、個人データを永続的に保存しない。
SSN(Social Security Number / 社会保障番号)は登録プロセスの一環として収集しない
- PIIを含まないデータ、または匿名化されたデータは無期限保持される。
生体認証
mDLでは、iProov社の技術を利用した生体認証およびライブネス検知(※認証対象が生きているかを確認する技術)の機能が採用されています。iProov社は、2011年に英国ロンドンで設立されました。2023年8月時点で、同社は計6回の資金調達ラウンドを通じて、合計7,095万ドルを調達しています。Identity & access management (IAM)の分野での注目度も非常に高く、多くの政府機関や企業が同社の製品を導入しています。mDLの利用申請の際に、この生体認証とライブネス検知の技術は申請者の本人確認のために利用されます。従来の本人確認方法は、写真付きのIDと申請者の顔写真を照合するものでしたが、偽造や写真の加工による問題が存在していました。
iProov社の技術は、顔の特徴を3Dで分析し、本人確認の精度を大幅に向上させることができます。さらに、ライブネス検知機能により、申請者がリアルタイムで確認を行っていることも確認できます。
生体認証の市場動向
上記に記載したように、カリフォルニア州のDMVはiProov社の製品を採用しています。しかし、グローバルな視点で見ると、どのような企業が生体認証の分野で活動しているのでしょうか。また、それらの技術は具体的にどのような場面で活用されているのでしょうか。これから、生体認証の市場に関する詳しい情報をお届けしたいと思いますが、続きは次回の記事でご紹介させていただきます。
その他、一緒に働く米国駐在員メンバーが発信している『Bay Area Newsletter』『Techh Blog』もありますので、こちらも是非チェックしてください。 私もいくつか記事を執筆しています。
参照リンク
https://www.dmv.ca.gov/portal/ (California Department of Motor Vehicles)